ドラマに見るヒーローとアンチヒーロー
林修先生(東進ハイスクール)の「いつやる?今でしょ!」に続いて、堺雅人演じる半沢直樹での「倍返しだ!」「100倍返しだ!」というセリフが注目を集めてきています。自分は半沢直樹を見ていないのでわかりませんが、香川照之演じる悪徳上司がアンチヒーローとなっているようです。
長引く不況のおかげで、失政のツケがそのまま来た挙句、もはやカタギではないブラック企業以外にも、DQN社員にDQn管理職が跳梁跋扈している現状で、半沢のような勇者的存在の活躍は見ている側にとって溜飲が下がるのでしょうね。
常見陽平氏のことばを借りれば、所詮俺たちはガンダムのジム的存在なんです。集団の中には必ずリーダー的存在がいるもので、この人が奮起すれば周りも自然に引き立ててくれるようになることが多いのだと思います。
少し前のドラマで、サラリーマン金太郎というマンガを原作にしたドラマもありました。主人公の矢島金太郎は、広域暴走族・八州連合の総長でしたが、盲目の妻のために心を入れ替え、妻の実家で漁師として暮らしていた時に、船で海釣りをしていたヤマト建設会長・大和守之助と出会います。それがきっかけで、ヤマト建設で鉛筆削り役から始まり、営業マンとして仕事をしていくうちに、フィクサー・三田善吉や中村カヨらを味方につけ、億単位の仕事が出来るようになるわけです。
当然、厚労省からの天下りOBである鷹司は、事あるごとに金太郎の邪魔をするわけですが、金太郎は追い詰められても這い上がっていきます。鷹司にはそれが当然おもしろくなく、余計に意地悪をしてきます。そんな彼も、ある大物の女性に恋をすることがあり、人間的な一面も見せるわけですが、アンチヒーローの位置は変わるわけはないし、機動戦士ガンダムのシャア・アズナブル*1のような美学はなく、タダのキザヤローでしかないのです。
この二つのドラマのアンチヒーローに共通しているのは、地位や権力を自分の力と誤謬している点です。結局、すり寄ってくるのは、そろばんずくの人間ばかりで、失脚しそうになったらとたんにポイですよ。その人の「魅力」ではなく、地位や権力から生じる「うまみ」にすり寄ってるのではないでしょうか。「地位が人を求める」という言葉の意味を今一度考えるべきではないかと思います。