Issueおじちゃんの新・ダメおやじ日記

自分の発達障害や日頃考えていることを綴って行きます。

「就職させない就労移行支援事業所」を生み出す背景を考察しよう

過去に、FVPのおおつか社長が就労移行支援事業所の不手際を指摘していましたが、花風社の浅見社長が「就労させない就労支援」と銘打ったブログの記事を読んでなるほどと膝を打ちました。今回は、「就職させない就労移行支援事業所」を生み出してしまう背景を考察してみます。

まず、問題となるのは、母体となる法人側が持つ事業所設立時のコンセプトだと思います。設立するにしても、社会資源が乏しく、自治体側も障害者雇用の開拓に乗り気ではない場合は、法人側がチャネルを豊富に用意できるくらいのバックボーンは必要ではないでしょうか。それこそ、「そこの事業所が呼び水となって、障害者雇用の対策が進んだ」と言われるくらいの人脈と資金力は要ります。

利用者にパソコンスキルを身に着けて就職させられれば…」という甘い見通しだけで、高価なソフト*1入りのハイスペックPCを導入して、基本的に利用者の自学自習によるとして丸投げするのは、「無責任な自己責任論」もいいところです。利用者が一番求めているのは、障害者雇用などを経て就職するために、どのように道筋をつけて自己実現に繋げてくれるかです。

さらに、利用者にしても、障害を問わず募るのか、特定の障害に特化した支援をするかで方向性はガラリと変わります。方向性を見出すのであれば、徹底的にそこに見合った支援のあり方を追求してほしいと思います。一番困るのは、「デモシカ事業所」です。国からの補助金が欲しいのかは知らないが、軽いノリや甘い見通しで設立されては、真剣に就職しようとしている当事者にとっては迷惑極まりないですよ。

次に、事業所側が社会の変化に対応できず、企業側のニーズやウォンツをくみ取れないことです。企業の多くは以下の思いを抱えていることが多いのです。

などなど。

障害者雇用において、当事者が大企業への憧れだけで先行する就職活動を展開させていても、何も言おうとせず当事者に丸投げにする専門職は今すぐ退職願を書いていただきたい。当事者の特性を洗いだして、それに合った企業を規模に関係なくつなげていくことが大事なのに、当事者が大企業ばかり受験している事実を専門職が批判するだけでは、対立が余計深まるだけにすぎないのです。

「やっぱり知的や身体が…」という企業の意識を、「発達障碍者も雇ってみようかな?」という気持ちに変えるFVPの事業を見習うべきではと思います。わかりやすい障害者ばかりを手厚くケアするのでは、専門職としての成長もないし、ケアされない利用者は「どうせ自分なんか…」といじけるか、怒りを滾らせて専門職に噛み付いてくることでしょう。これでは、双方の成長などあったもんじゃありません。

一番根深いのは、就労移行支援事業の枠組みそのものではないかと思います。障害者雇用は、地域格差も障害格差もあるわけです。それを度外視して、厚生労働省の都合で「就労移行支援事業所は最大3年しか居れないよ!」と決めつけているのは、とんでもない横車の押しっぷりですよ。横車どころか「横ダンプカー」と言ってもいいくらいの横暴ぶりです。セーフティーネットの網の目が惰弱であるのをいいことに、ドサクサまぎれに密室会合なんかで決めてしまったとしか思えません。すべての障害者が3年以内に、自立できるほどの給料がもらえる会社につけたら世話ないですよ。

結論として、社会の変化、利用者や企業側のニーズやウォンツに対応できない「ジコマン事業所」が、就職させない就労移行支援事業所として跳梁跋扈してしまうのではないかと考えます。さらに社会資源の不足にかこつけて、闇雲に利用者を取り込んでは、就労させずに社会に踏み出す力を奪うのであれば、これじゃあ貧困ビジネスと揶揄されても何も言えないでしょ。就職に結びつかない上に、低い工賃で自立できないのなら、施設側は障碍者の不幸でメシがウマいと言っていると見なされて当然ですよ。

番外編-障害者求人の狭間を漂う発達障碍者

障害者雇用という広大な宇宙において、就職できない発達障碍者は、世間の目からは「スペースデブリ」にでも見えるのかもしれません。何ともみじめだし、一面哀れです。

発達障害という概念そのものが比較的新しく認識されたものであるせいか、雇用に関しても、発達障碍者に向けた雇用は実に希少です。むしろ、一般企業で就職しても、発達障害特性が原因で力を発揮できずに、社会の片隅に追いやられて、福祉事業所という惑星に漂着するも、結局他の障害者からのハンパないアウェー感を感じてしまうわけで。これって、本当にどうなんだと思いますよ。

一番の原因は、発達障碍者向けの求人が確立できていない事実にあるのだと思います。企業側の見地としては「障害者であって障害者にあらず」という微妙なもので、彼らに向けた雇用が確保しにくいのも当然ではないでしょうか。まず、キャリアプランにしても、障害者雇用であればまず管理職になることはありえないし、給料体系もたいていは低い。障害年金にありつけている当事者ならまだいいのかもしれませんが、たいていはキンタロー飴的年金制度の壁に阻まれ、泣き寝入りしている当事者ばかりです。俺もその一人ですが。

当事者が出来るのは、ビジネススキルなどを身に着けることくらいでしょうが、国や有識者が企業と連携してできるのは、発達障碍者にもなじみやすい雇用システムを作ることです。それか、発達障碍者が比較的受給しやすい障害年金制度を新設した上で、障害者雇用に回ってもらうことなどをしないと、発達障碍者は永遠にスペースデブリのままでしかありません。

ただでさえ傷ついた自尊心と持て余している自分自身を引きずっているのに、十分に福祉を受けさせないなどの不利益を被らせてしまうのはどうかと感じます。このままにしてしまうと、社会よりも自分自身に幻滅して自殺すらしかねないでしょう。