樋口康彦氏の論文より
「準ひきこもり」の用語で有名となった富山国際大学の樋口氏は、
ある学生との交流を踏まえて、「生徒指導が極めて困難な事例の研究」
を2005年に発表しました。
今更ながらではありますが、読んでいて感じたことをまとめてみることに
します。
対象となっているA君は高校時代にノイローゼで通院している以外は
問題もなく、ある形式のテストではIQ100台と出ていました。
多少問題はあっても、何でもないと看過されてきたのでしょう。
発達障害者の例と似ている気もします。
「主な社会的スキル」と銘打って、以下のことを習得させようと
樋口氏は指導してきました。
- 適切な服装。身だしなみ。
- 礼儀作法、挨拶、お礼、敬語、社交辞令。
- 適切な会話の運び方。相手に関心を示す。相手を認め、褒める。相手に警戒心を起こさせないよう、気楽な雰囲気を作る。不快感を起こさせない。気まずい沈黙を作らない。
- 適切な情報の取り方、伝え方。質問をする。
- 印象の管理。責任感がある、誠実、優秀といったプラスの印象を貯金する。無責任、不誠実、精神的に不安定、無能などマイナスの印象を持たれないよう気をつける。
- 適切な仕草をする。人の仕草の読み取り方(分析力)。← 非言語コミュニケーション
- 話の聴き方。人の話をうまく聞く。相手の話を中断しない。理解していることを伝える。
- 適切な自己表現(自分に不利なことは言わない。自慢をしない……)。
- 社交辞令の裏にある相手の本心を見抜く。
- 仲間の入り方。
- 適切な誘い方。適切な断わり方。
- 適切な振るまい。自分をモニタリングする能力。無意識のうちに不適切な行動を取っていないか確かめる(悪気はなくても不適切な言動で不快感を与えていないか)。場の空気を読む。
- 問題処理の仕方。うまく助けたり助けを求める。
- 社会ルールについての知識を持ち、守る。
- 自分の感情を認識し、コントロールする。行動、表情をコントロールする。
- 求められている役割を知る(役割認知): 信用の貯金をする。
- 自分を動機付ける。
- 他者と適切な距離を取る。
(ファイルからのコピーだが、一部誤字修正とはてな表記使用)
件の学生が上に挙げられていることすべて出来てたら、円満に
学生生活を過ごして、就職も内定して仕事も続けているでしょう。
樋口氏が取り上げた学生はこの特徴とはまったく逆の性質で、相手から
グチられるのはおろか、自宅付近で執拗に待ち伏せまでされたそうです。
大雑把に言えば、広汎性発達障害等の特徴とされる「三つ組の障害」
(社会性・コミュニケーション・想像性)と共通しているのではないかと
思えてくるのです。
もう5、6年も前のことなので、この学生はどうなったかは知りませんが、
今も同じように衝突しては辞めて行くことを繰り返しているのであれば、
若者サポートステーションや障害者職業センターへ紹介すべきです。
状況としては、知的障害がなく自分が失敗を繰り返す理由を理解して
いないようなので、たとえIQが高くても発達障害の可能性は充分あると
思います。本当ならばなるべく早いうちに病院を受診したほうが賢明です。
最後は社会的スキルが高ければいいなぁという程度の願望を書いているに
すぎないので、クリシェで塗り固めるよりは、樋口氏の提言を聞き
たかったですね。ネタはいいのに、料理法でしくじってしまった観が
否定できません。
参考までにリンクを貼っておきますので、興味があればどうぞ。
(pdfファイル)
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