高校時代のH先生・S先生との出会い
黒銀学園高校に比べたらまだかわいいかもしれないが、当時の自分にとっては
怖くて仕方が無い場所でもあった。
親身になってくれる先生は1人いれば上等だった。
私立学校は公立学校の教員生活を終えて天下る人が多く、大半の先生は1年程で
退職していった。公立の進学校で教鞭をとっていた方にとっては、地獄に叩き
落とされた気分になったろう。
時間講師も公立高校出身の方がほとんどを占めていたが、美術のH先生との
出会いが自分の美術への考え方に影響を与えてくれた気がする。
専門学校から教えに来てくれているとのことだったが、絵心がなくどうしようも
ない自分でも、その中から創造性を見出してくれたりした記憶もある。
唯一強烈に記憶が残っているのが、「手をきれいに描けるようになることは一生
かかるよ」という一言だった。確か手の描き方を聞いた時だったと思う。
それから美術というものへの見方が変わったのかもしれない。
1年生の時、自分は入学式からヤンキーに徹底的にマークされていて、ガムを
学生服につけられたこともあった。奴らからしてみればほんの軽いいたずら
だろうが、俺としてはミジメだった。
そんな俺を見かねて、化学のS先生が「ちょっと学ラン持って来い」と職員室まで
連れて行った。ガムの付いた部分にフラスコに入った透明の液体をたらし、
こそげ取るようにして緑色のガムを取ってくれた。
この液体は何ですかと聞いたら、「ベンゼンなどの混合液だよ」と笑顔を浮かべて
教えてくれ、この時化学の先生のすごさを知ったのだった。
両先生は辞められてしまったので非常に残念だが、自分はたとえ違う領域であっても
この先生方のようにいざという時に力や知恵を発揮できるような人間になりたい。
共通していたことは、話しかけやすくて実に温かみのある方だということだ。